トータス松本さんからの応援メッセージ

「あぁ、愛おしき我がほぼ青春の加古川線」

加古川線の増便実験は、2025年10月13日(月)まで行われました。
たくさんのご乗車ありがとうございました!

トータス松本さんのポートレート

写真提供:トータス松本さん(掲載許可取得済)

いただいたメッセージ


★★ あぁ、愛おしき我がほぼ青春の加古川線 ★★

小さい僕はたまに汽車に乗って、祖母と谷川駅まで行く。祖母の病院への付き添い、というか暇つぶしに付いて行くと、祖母が喜んでプラモデルを買ってくれるのだ。

黒田庄駅は僕の家からは近いのだが、実はもっと近道がある。お地蔵さんの先を西へどんどん降りていくと、駅の反対側へ出られる。そして「すみません」という感じか、あるいは何食わぬ顔で線路を跨いで切符を買うか、時には「待ってー」と叫びながらギリギリセーフで上りの汽車に飛び乗る事もある。

僕が県立社高校へ通うためには、毎朝8時前の汽車に乗らないといけない。汽車といっても線路上を自走するディーゼルエンジン車両キハ40系だ。 朝の車内はボックスシートタイプで、いつも同じおっさんと向かい合って座る。国鉄“JNR”のロゴの入った灰皿が窓の下部に備えてあって、今朝もおっさんは高校生の事など気にもせずにタバコをスパスパ吸う。

比延駅を通る時は、いつも伯母さんを思い出す。スーパーカブが愛車の伯母さんは、比延に嫁いだ親父のお姉さんだ。

いったい何が新しいのかさっぱり分からない新西脇駅。人間は人や物にやたらと望みを託したがる。ただ、新幹線で新大阪、新神戸、新横浜などの駅を通ると、たまに新西脇の駅を思い出す。その程度の事だから、“新“の意味を考えすぎるのはやめた。

野村駅は、今は西脇市駅という。 ここで乗り継ぎの汽車を待つ。 やっと来た加古川方面行きの車両に乗ると、ここからはロングシートタイプ。車内はそれなりに混んでいる。

車窓から見えるのは、左手に加古川とその町並み。兄が勤めている中華料理店もこの辺りだ。 それから“千石うどん“の看板。食ったことはない。名前がいかつい闘竜灘もこの辺り。 右手はひたすら緑の大自然。 緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェならぬ、くすんだ赤のキハ40系。

学校の最寄り駅は滝野駅。駅前のタバコ屋さんの、店の奥の薄暗いスペースが自転車預かり所になっていて、僕も愛車のママチャリを置かせてもらっている。 ここからみんなで自転車に乗り換え、トライアスロンのごとく一斉に学校へ向かって走り出す。

ところでその愛車のママチャリを、訳あってひと晩滝駅に置いていたらサドルを盗まれた。自転車は無事で、サドルだけが無くなっていた。ドロボーは正直だ。オンボロのママチャリ本体に用はない。だがそれに無比の愛着を持っている自分の感性を僕は信じる。

学校の帰り、月に何回かは野村(今は西脇市)で降り、僕はギターをかついでサウンドサークルまで歩く。バンドの練習ができるスタジオが、このレコード屋さんの2階にひと部屋だけある。 お金がある時は途中でキャロットハウスに寄ったりもする。いつもボブ・マーリィがかかっていて、高校生にはちょっと背伸びの空間だ。

それからまた汽車に乗って、後は疲れた身体をガタンゴトンの揺れにまかせてぼんやり、ウォークマンでRCサクセションを聴いたりしている。日はもう暮れかけて、車内も静かで。

やっと黒田庄駅に着く。 停車と同時に半自動のドアがプシューッと開き、そのちょっとの隙間に手を入れ、ドアを開けて外に出る。そうして僕の1日は終わる。

そんないつものキハ40系、友達がてんかんの発作を起こして突然ぶっ倒れたり、他校へ行った片想いの子が彼氏らしき男と並んで僕の真正面に座ってたり、見知らぬおじさんの説教に友達がキレて口論になったりと、日々色々な出来事が満載なのだが、夜眠る時に目を閉じると、思い出すのは決まって笑っているみんなの顔だったりする。ガタンゴトンと汽車に揺られながら、みんなゲラゲラ笑って楽しそうだ。そしてそれはフィクションでも何でもなく、間違いなくそこにあった。ある日の加古川線の、とある車両の中に。

最後にちっぽけな青春をもうひとつ。 ひとり暮らしを始めた大阪で、ついつい汽車生活の癖が出る。学校へ向かう阪急電車の梅田駅。電車が停まったので思わずドアに手をかける。手で開ける動作が自然に出てしまい、まわりの人に笑われて真っ赤になった。

トータス松本

加古川線沿線おすすめスポット

日本へそ公園エリア
岡之山美術館/テラ・ドーム(天体観測・プラネタリウム・科学を学ぶ)/日本へそ公園(メタセコイア並木 ・遊具広場)
黒田庄エリア
兵主神社/岡稲荷神社(鳥居の並ぶ“ミニ伏見稲荷・トータス松本さん寄進の鳥居”)
久下村エリア
たんば恐竜博物館(2025年7月リニューアル)

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